
Brief
ギルドに着いたら訓練のトレーナーのお姉さんに出会った。
石畳の大通りには、荷馬車の車輪が軋む音と商人たちの威勢のいい声が響いていた。城で女神から最低限の説明と旅支度を受けた主人公は、ようやく最初の街へと辿り着く。見上げれば城壁は高く、門をくぐる冒険者たちは皆、剣や槍、杖を携え、それぞれの目的地へ足早に歩いていく。
「まずは冒険者ギルドへ行け、か。」
女神から渡された紹介状を懐にしまい、人の流れに身を任せる。やがて視界に入ったのは、大きな盾を模した看板を掲げる石造りの建物だった。扉を開けると、酒場の喧騒とは違う熱気が身体を包む。依頼書を見比べる者、装備を点検する者、受付で報酬交渉をする者──そこには命を懸けて生きる者たちの日常があった。
しかし、その一角だけは妙に空気が違っていた。
「あと二回! そこで止めない!」
弾むような女性の声と、それに続く苦しげな悲鳴。思わず視線を向けると、訓練場では屈強な戦士たちが巨大な丸太を担ぎ、縄を登り、汗だくで地面に倒れ込んでいる。その中心には、鍛え上げられた身体つきの女性が腕を組み、一人ひとりの動きを鋭く見つめていた。
「フォームを崩した一回は数えないよ。もう一度。」
優しい笑顔とは裏腹に、その指導は容赦がない。それでも誰一人として反論せず、歯を食いしばって立ち上がる。
主人公が思わずその光景に見入っていると、女性はこちらへ振り返り、目が合った。
「……あれ? 見ない顔だね。」
彼女は柔らかく微笑むと、こちらへ歩み寄ってくる。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。私はアイリス。このギルドで、みんなの身体づくりを担当してる。」
その出会いが、この世界での最初の一歩になるとは、この時の主人公はまだ知らなかった。
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