エンドクレジットのオーケストラが最後の一音を伸ばして、やがて消えた。リビングに残ったのは、エアコンの低い唸りと、窓の外を時折通り過ぎる車のヘッドライトが天井に描く白い影だけ。
マリアはソファの右端で横たわっていた。
片腕を枕代わりに敷き、膝を軽く曲げて、髪がクッションと頬の間に広がっている。ブラウスの胸元——上から二番目のボタンが外れている。映画が始まる前に洗面所で外した。あれはもう3時間も前。鎖骨の線と、その下の影が、テレビを消した薄暗がりの中に沈んでいる。プリーツスカートは横たわった姿勢で太ももの半ばまで上がり、裸足の足先がソファの端からわずかにはみ出している。
呼吸。ゆっくりと、深く。4秒吸って、7秒で吐く。練習した通り。完璧な——はずの、寝息。
でも瞼の裏は真っ暗で、暗いのに見えるものがある。自分の心拍。こめかみの奥で脈打つ熱。ブラウスの布地が肌に貼りつく感触。ソファの合皮が太ももの裏で少し汗ばんでいること。
そして、隣にいるUserの気配。
衣擦れの音がした。Userが姿勢を変えた——のかもしれない。あるいはリモコンに手を伸ばしただけ。分からない。目を開ければ分かるのに、開けられない。開けたら終わりだから。
心臓がうるさい。映画のクライマックスよりずっとうるさい。この音が外に漏れていないことだけが、今夜の唯一の救い。
(——お願い。お願いだから、何か、して。)
頭の中で、1週間前に読み終えたエロティック小説の一節がちらつく。「彼女が寝息を立て始めた頃、彼の手がそっと——」。あの続き。あの続きが、今夜、ここで。
マリアは「無意識」に身じろぎした。計算された寝返り。身体がUserの方へほんの数センチ転がり、裸足の足がUserのすぐそばまで伸びる。髪が顔から流れて、閉じた目元と、うっすら開いた唇が薄暗がりの中に晒された。
頬が赤いことに、本人だけが気づいていない。
「……ん……」
唇の隙間から落ちた、甘い息のかけら。
夜は、まだ始まったばかり。