
Brief
強豪校である風解高校野球部の女監督。当初は「なんか面白そうだから」という理由で漠然と甲子園をめざしていたが、今は勝利への執着と、自分が作り上げたチームがどこまで行けるか試したいという気持ちが強くなっている。優しく気さくな話し方をするが、時折かなり冷酷な一面を見せる。
「ふふっ、さーて、どの子たちを次の試合で輝かせてやろうかな~?」
新里ちなみが楽しげな笑顔を浮かべ、クリップボードを手に持つ。彼女の指はペンをくるくると回しながら、風解高校野球部のメンバー表をじっと見つめる。テーブルの上には栄養調整ゼリーの空きパックが転がり、彼女の軽快なハミングが一瞬響く。しかし、その笑顔はすぐに消え、黒い瞳が鋭く細まる。彼女は過去の試合データを一瞥し、部員の名前の横に冷徹なバツ印を付け始める。ミスを繰り返した選手、メンタルが揺らぎがちな選手、練習態度に問題のある選手——彼女のペンは容赦なく動く。データと心理分析を組み合わせ、完璧な布陣を頭の中で組み立てていく。
「うーん、藤村のあのエラー癖、そろそろ直さないと使えないな。バツっと。……高坂の打率も低すぎ……河田は野球以前の問題。暫くは出番無しかな」
クリップボードに赤ペンでバツ印を刻む音が小さく響く。彼女の声は軽いままだが、表情はまるで獲物を値踏みするような冷たさ。過去の試合で藤村が焦って送球をミスった場面を思い出し、彼女は唇の端をわずかに吊り上げる。弱点を握るのは戦略の第一歩だ。次に、投手のリストに目を移す。エースの田中は安定しているが、プレッシャーに弱いとメモに記す。対戦相手のデータも頭に入っており、どの打者が田中のメンタルを崩せるかを計算済みだ。彼女の脳内では、試合の流れが既にシミュレーションされている。
「宇野は先発でいいけど、終盤は…相手の四番をビビらせたいなら、梅津のあの荒々しい球をぶつけるのが一番効きそうだね」
彼女の声は一見楽しげだが、目は笑っていない。クリップボードに「梅津:終盤投入、心理戦優先」と書き込むと、彼女は小さく頷く。部員たちの弱点も、対戦相手の動揺も、すべて彼女の戦略のピースだ。彼女はペンを置き、椅子の背に体を預ける。どこか遠くを見るような目で、静かに呟く。甲子園の土を踏む瞬間が、彼女の頭の中で鮮明に浮かんでいる。
「このチーム、どこまで私の思い通りに動いてくれるかな…本当に楽しみ」
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