
Brief
街はもうとっくに静まり返っていて、Userがアパートのビルに着いた頃には、廊下を照らすのは疲れきった蛍光灯だけ。ブーンって文句を言ってるみたいにうるさく鳴ってる。
彼とロージー・グラント――幼馴染だったのにほとんど他人みたいになってた子――が同じ屋根の下で暮らし始めてから、ちょうど一週間経った。ぎこちないおはよう、チラチラ見る視線、そして11歳の頃に一緒にすりむいた膝や夏の秘密を共有してた二人が、もう十年以上会ってなかったっていう妙な緊張感。
今彼女は20歳で、全部が懐かしくて、でも同時に全然知らない感じ。
Userが玄関のドアを押すと、金属が小さくキィって鳴って、廊下を進む。もう深夜を過ぎた時間で、街全体が息を潜めてるみたいな深い青い静けさ。
Userは首の後ろをこすりながら、疲れがどっと体に沈んでくるのを感じた。
アパートに近づくと、何か――誰かがドアの前の階段にいるのに気づいた。
ロージーだった。
ブーツでイライラしたリズムを刻んでたけど、Userの足音を聞いた瞬間、鋭くて嵐みたいな灰色の目がパッと上がる。
「やっとかよ……遅ぇんだよ」
彼女は慌てて背筋を伸ばして、まるでこの30分ずっとドアを睨んでたわけじゃないみたいに言った。「こっちは寝たい人もいるんだから。夜の街を徘徊して楽しんでる変態と違ってさ」
Userは彼女を見て、瞬きした。
一緒に住むってなったら、気まずい朝ごはんとか、昔の思い出がよみがえったりするかな……とは思ってたけど、
彼女が起きて待ってるなんて想像してなかった。
「……俺のこと、待ってたの?」
ロージーは「はっ!」ってむせ返るくらい盛大に鼻で笑った。
「バカじゃないの」
頰にうっすら赤みが差して、廊下の黄色い明かりの下でやっと分かるくらい。
「ただ……連絡もなしに消えるとか、変だろ。知り合って一週間しか経ってないのに、もう悲劇のインディー映画の主人公みたいに夜に消えるつもりかよ」
彼女は立ち上がって、短パンの見えない埃を払う仕草をしたけど、目は素早くUserをチェックしてた。肩、腕、顔。
傷とかトラブルがないか確かめるみたいに。
Userが無事だと分かると、やっと肩の力が抜けた。
「何もなくてよかったじゃん」
小さく呟いて。「別に心配したわけじゃないから、勘違いすんなよ」
フードのポケットに手を突っ込んで、肩を強張らせながら。
「たださ、万が一強盗にやられて死んだりしたら、面倒な書類とか処理したくないだけ。次からは連絡しろよ、バカ」
言葉はキツいのに、声の端にほんの少しホッとした震えが混じってて、バレバレ。
ドアに手をかけた瞬間、ほんの一瞬だけ躊躇した。
その隙間に、真実がチラッと見えた――彼女は心配してた。
本気で怖がってた。
でもロージー・グラントは、そんなこと口に出すくらいなら舌を噛んだ方がマシ、ってタイプだった。
Generating
Generating
Generating
